名古屋駅西側、名古屋市中村区太閤三丁目にある「旧牧野公設市場・旧笈瀬荘」の跡地活用が動き始めました。
名古屋市は、土地759.61㎡と既存建物を一体で民間事業者へ売却し、公募型プロポーザルによって開発事業者を選ぶ計画です。最低売却価格は269,817,271円で、単に最も高い価格を提示した事業者が選ばれる仕組みではありません。地域住民の生活利便性や、名古屋駅方面からの人の流れを生み出せるかどうかも審査対象になります。
2026年9月17日時点では、最終的に何の施設ができるのか、事業者はまだ決まっていません。
この記事では、公表された募集要項と物件資料をもとに、予定地の条件、どのような施設が求められているのか、今後のスケジュール、そして名古屋駅西側の不動産を見るうえで注目したい点を整理します。
- この記事で分かること
- 先に結論|土地・建物を民間へ売却し、2027年3月までの契約締結を目指す計画
- 最低売却価格は約2億7,000万円|ただし「土地の坪単価」とは考えない方がよい
- 最も高く買う会社が選ばれるわけではない|価格は審査100点中20点
- 跡地には何ができる?現時点では施設名や事業者は未定
- 不動産の視点で見ると、今回の土地には特徴的な条件がある
- 過去の浸水実績も資料に記載されている
- 今後のスケジュール|2026年12月ごろに候補者選定予定
- 名古屋駅西側の不動産価格は上がる?
- 周辺の土地所有者が今回の案件から確認しておきたいこと
- ヒロセット不動産への相談について
- まとめ|跡地の「何ができるか」は事業者決定後が重要
- よくある質問
- 関連記事
- 参考情報
この記事で分かること
- 旧牧野公設市場・旧笈瀬荘跡地の場所と規模
- 最低売却価格と開発事業者の選定方法
- 跡地に求められている施設の条件
- 用途地域・道路・越境・既存建物など不動産上の注意点
- 今後いつ事業者や施設計画が明らかになるのか
先に結論|土地・建物を民間へ売却し、2027年3月までの契約締結を目指す計画
今回の「旧牧野公設市場・旧笈瀬荘跡地活用事業」は、名古屋市が土地だけを更地で売却する案件ではありません。
759.61㎡の土地と、1969年建築の鉄筋コンクリート造5階建ての建物を一体で売却し、選ばれた事業者が既存建物を活用するか、必要に応じて解体し、新しい施設を整備します。旧牧野公設市場は2021年4月、市営笈瀬荘は2025年3月に廃止されています。
公表内容を整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 事業名称 | 旧牧野公設市場・旧笈瀬荘跡地活用事業 |
| 所在地 | 名古屋市中村区太閤三丁目714番 |
| 土地面積 | 759.61㎡ |
| 地目 | 宅地 |
| 建物 | RC造・地上5階建て |
| 建物床面積 | 1,641.35㎡ |
| 建築時期 | 1969年 |
| 売却方法 | 公募型プロポーザル |
| 最低売却価格 | 269,817,271円 |
| 開発事業者決定予定 | 2027年3月 |
| 売買契約締結期限 | 原則2027年3月31日 |
| 施設完成期限 | 原則2031年度末 |
名古屋市の募集要項では、契約後原則1年以内に工事へ着手し、2031年度末までに施設を完成させることが条件とされています。スケジュールは変更される可能性があります。
最低売却価格は約2億7,000万円|ただし「土地の坪単価」とは考えない方がよい
最低売却価格は269,817,271円です。759.61㎡で単純に割ると約35.5万円/㎡、坪換算では約117万円/坪となります。
ただし、この数字をそのまま周辺土地の相場や「太閤三丁目の土地価格」と比較するのは適切ではありません。
今回の物件には、既存建物、施設用途の条件、越境、土壌、アスベスト、事業期間など複数の条件があります。さらに建物付きの現状有姿で売却されるため、一般的な更地取引とは前提が異なります。
周辺土地の所有者が今回の最低売却価格だけを見て、「自分の土地も坪117万円程度」と判断することは避けた方がよいでしょう。
不動産価格を見る際には、道路、用途地域、土地形状、間口、建物の有無、利用できる用途、権利関係などを個別に確認する必要があります。
最も高く買う会社が選ばれるわけではない|価格は審査100点中20点
今回の公募で特に注目したいのが、開発事業者の選び方です。
審査は100点満点ですが、売買価格に与えられている配点は20点です。残る80点は、施設計画や運営計画、事業実施体制、資金計画・リスク管理などで評価されます。
| 評価項目 | 配点 |
|---|---|
| 1階を中心とした建築計画 | 20点 |
| 1階を中心とした運営計画 | 20点 |
| その他部分・敷地全体の活用 | 10点 |
| 事業実施体制 | 15点 |
| 実現性・リスク管理 | 15点 |
| 売買価格 | 20点 |
| 合計 | 100点 |
つまり、名古屋市は土地を高く売ることだけではなく、「この場所を今後どう使うのか」を強く重視していることが分かります。
一般の不動産売買でも同じですが、土地の価値は単純な坪単価だけでは決まりません。
「その土地で何ができるのか」「誰が利用するのか」「どのような事業なら継続できるのか」という利用価値も、不動産を考える重要な視点です。
跡地には何ができる?現時点では施設名や事業者は未定
2026年9月17日時点では、スーパー、医療施設、マンションなど、具体的な施設が決定したという公式発表は確認できません。
一方、募集条件からは、名古屋市がどのような施設を求めているのかを見ることができます。
1階部分を中心に、次のどちらかの機能を持つ「にぎわい創出施設」を設けることが求められています。
一つは、近隣住民が日常的に利用できる小売店舗や生活利便施設。
もう一つは、来街者の増加や滞在時間の延長につながり、名古屋駅方面から笈瀬本通商店街周辺へ人の流れを生み出す集客施設です。
この1階部分の施設については、供用開始から5年間、計画した機能を継続することも条件となっています。
上階などその他の部分については、関係法令を守ることを前提に、比較的幅広い用途の提案が認められています。したがって、最終的な施設構成は選定される事業者の提案を確認する必要があります。
不動産の視点で見ると、今回の土地には特徴的な条件がある
今回の跡地は「名古屋駅から約1km」という立地だけを見ると分かりやすい土地に見えます。
しかし、募集資料を詳しく見ると、開発を考えるうえで確認すべき条件が複数あります。
1.近隣商業地域と第二種住居地域の両方にかかる
名古屋市の物件説明書では、対象地は市街化区域で、近隣商業地域と第二種住居地域の双方にまたがっています。
建ぺい率は80%・60%、容積率は300%・200%と記載されており、絶対高45m高度地区などの指定もあります。詳細な建築可能規模については敷地内の用途地域境界などを確認したうえで検討する必要があります。
「名古屋駅に近いから何でも建てられる」というわけではありません。
これは一般の土地でも同じで、駅距離だけでなく用途地域や建築制限を確認することが重要です。
2.東側は幅員約15mの市道に接している
対象地は東側で幅員約15mの市道に接しています。また、名古屋市の資料では地下鉄名古屋駅から南西へ約1.0km、市バス「牧野町」停留所から約0.2kmとされています。
道路幅員は建築計画だけでなく、店舗への車両アクセス、工事車両、歩行者動線などにも関係します。
ただし、土地の使いやすさは道路幅だけでは判断できません。間口や道路との接し方、出入口の位置、周辺交通なども含めて検討する必要があります。
3.JR東海所有地への越境があり、定期借地契約が必要
今回の案件で特に特徴的なのが越境関係です。
既存建物の耐震フレームなどがJR東海所有地へ越境しており、約9㎡を借入占有しているため、開発事業候補者となった後にJR東海との定期借地契約が必要になります。
既存建物を解体する場合でも、越境が解消されるまで定期借地契約が必要になる想定です。
募集要項では、隣地所有者との協議結果によって定期借地契約を締結できない場合、開発事業者として決定されず、名古屋市との売買契約を締結できない可能性も示されています。
これは、一般の土地売買でも「境界・越境を価格査定より先に確認する意味」が分かりやすい例です。
4.既存建物・土壌・アスベストも事業費へ影響する
1969年建築の建物は現状有姿で売却されます。
名古屋市の資料によれば、建物は未登記で、一部にアスベストを含む建材が使われています。また、2025年6月に土壌調査が実施されており、土壌対策や地下埋設物への対応が必要となった場合の費用は購入者負担とされています。
そのため、事業者にとっては「土地をいくらで買うか」だけではなく、
購入費+解体・改修費+土壌等への対応費+新施設の建築費+運営費
まで含めて事業性を判断する必要があります。
古家付き土地や事業用地でも、同じように「土地価格だけを比較しない」ことが重要です。
過去の浸水実績も資料に記載されている
物件説明書では、この土地が平成12年および平成25年の豪雨浸水区域に含まれていると記載されています。これは過去の浸水実績についての情報であり、現在の洪水・内水ハザードの内容とは別に最新情報を確認する必要があります。
土地を購入・活用するときは、「過去に浸水したか」と「現在どのようなハザード区域に指定されているか」を分けて確認することが大切です。
これは今回の公有地だけでなく、名古屋市内の住宅用地や事業用地を見る場合にも共通します。
今後のスケジュール|2026年12月ごろに候補者選定予定
名古屋市が示している予定は次のとおりです。なお、今後変更される可能性があります。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2026年8月7日 | 募集要項公表 |
| 2026年9月4日 | 現地確認・説明会 |
| 2026年9月18日 | 質問期限 |
| 2026年9月30日 | 質問回答期限 |
| 2026年10月30日 | 参加表明書提出期限 |
| 2026年11月13日 | 応募図書提出期限 |
| 2026年12月頃 | 審査・開発事業候補者決定 |
| 2027年3月頃 | 開発事業者決定 |
| 原則2027年3月31日まで | 売買契約締結 |
| 契約後原則1年以内 | 工事着手 |
| 原則2031年度末 | 施設完成 |
今後、特に注目したいのは「2026年12月頃の候補者決定」と、その後に公表される事業者名・具体的な施設計画です。
事業者が決まるまでは、「○○が建設される」と断定しないよう注意が必要です。
名古屋駅西側の不動産価格は上がる?
今回の跡地活用だけを理由に、「太閤周辺の不動産価格が上がる」と判断することはできません。
不動産価格は、駅距離、道路条件、用途地域、土地面積、建築可能規模、周辺の住宅・事業需要、金利、供給量など多くの条件によって変わるためです。
一方で、最終的にどのような施設が整備されるかによって、周辺の生活利便性や人の流れが変わる可能性はあります。
周辺不動産を所有している方が今後確認したいのは、地価の予測よりも、
「どの事業者が選ばれたか」
「1階には何が入るのか」
「住宅・店舗・事業系など、上階をどう使うのか」
「施設規模や完成時期はどうなるのか」
といった具体的な計画です。
周辺の土地所有者が今回の案件から確認しておきたいこと
今回の公募案件を見ると、土地は所在地と面積だけでは評価できないことがよく分かります。
同じ名古屋市中村区、同じ名古屋駅徒歩圏であっても、道路、用途地域、容積率、境界、越境、既存建物、土壌、ハザードによって利用できる方法は変わります。
そのため、自分の土地についても、
「いくらで売れるか」
だけではなく、
「どのような建物が建てられるのか」
「住宅・店舗・賃貸・事業用のどの需要と相性がよいのか」
「建物を残す方がよいのか、更地にする方がよいのか」
まで整理しておくと、売却・保有・活用を比較しやすくなります。
今回の跡地の最低売却価格や今後の施設計画を、そのまま周辺土地の価格へ当てはめるのではなく、「土地の条件によって利用価値が変わる事例」として見る方が実務的です。
ヒロセット不動産への相談について
名古屋駅周辺や名古屋市中村区で土地・建物を所有していても、すぐに売却を決める必要はありません。
「将来売る可能性があるので条件だけ確認したい」
「古い建物を残すか解体するか迷っている」
「事業用として売れる土地なのか知りたい」
「周辺開発が自分の不動産にどのように関係するのか整理したい」
という段階から、土地の条件を確認しておくことには意味があります。
道路、用途地域、土地形状、建物、境界などを確認し、売却・保有・活用の選択肢を整理したうえで判断するとよいでしょう。
まとめ|跡地の「何ができるか」は事業者決定後が重要
旧牧野公設市場・旧笈瀬荘跡地では、土地759.61㎡と既存建物を民間へ売却し、地域の生活利便性やにぎわいにつながる施設を整備する事業者を公募しています。
注目したいのは、最低売却価格約2.7億円という数字だけではありません。
価格の審査は100点中20点であり、施設内容や運営計画などが80点を占めています。また、用途地域、既存建物、越境、土壌など、土地活用を左右する条件も複数あります。
2026年9月17日時点では具体的な施設は決まっていないため、次の大きな確認ポイントは開発事業候補者と提案内容の公表です。
周辺に不動産を所有している場合も、今回の案件から地価の上昇・下落を予測するのではなく、自分の土地の道路、用途、建築条件、利用可能性を整理する材料として見るとよいでしょう。
よくある質問
Q.旧牧野公設市場・旧笈瀬荘跡地には何ができますか?
2026年9月17日時点では具体的な施設は決まっていません。1階を中心に生活利便施設または集客施設を設けることが公募条件ですが、店舗名や施設構成は開発事業者の選定後に確認する必要があります。
Q.土地はいくらで売却される予定ですか?
最低売却価格は269,817,271円です。ただし、これは最終的な売買価格ではありません。応募事業者が提示した購入希望価格などを含めて審査され、選定事業者の提示価格が契約価格になります。
Q.古い建物は解体されますか?
現時点では確定していません。募集要項では既存建物の活用と解体の双方が想定されています。どちらを選ぶかは事業者の提案や越境対応、事業計画などによって変わります。
Q.マンションが建つ可能性はありますか?
具体的な住宅計画は公表されていません。1階には所定のにぎわい創出施設が必要ですが、それ以外の部分には一定の範囲で多様な用途を提案できます。最終的な用途は選定された事業計画の公表を待つ必要があります。
Q.この開発で周辺の土地価格は上がりますか?
今回の計画だけから周辺地価の上昇を断定することはできません。最終的な施設内容や周辺需要に加え、個々の土地の駅距離、道路、用途地域、土地形状、建築条件などを個別に確認する必要があります。
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参考情報
名古屋市「旧牧野公設市場・旧笈瀬荘跡地活用事業の提案募集」
名古屋市公式ページ
名古屋市「旧牧野公設市場・旧笈瀬荘跡地活用事業 募集要項」
募集要項(名古屋市)
※本記事は2026年9月17日時点で確認できる名古屋市の公表資料をもとに整理しています。事業者、施設内容、スケジュール等は今後変更・更新される可能性があります。



