愛知県が、弥富市の元海翔高等学校と一宮市の元尾西高等学校について、土地・既存校舎などを一括して取得し、利活用する民間事業者の募集を始めました。

対象面積は元海翔高校が40,822.68㎡、元尾西高校が53,571.68㎡。どちらも4万㎡を超える大規模な県有地ですが、単純に「広い土地が売りに出た」という話ではありません。

両物件とも市街化調整区域にあり、開発・建築には原則として都市計画法上の許可が必要です。さらに、取得後10年間の用途継続や所有権移転等の制限も設定されています。

そのため今回の公募を見るうえでは、「いくらで売れるか」だけではなく、何に利用できるのか、既存建物をどう扱うのか、地域とどのように調整するのかを見ることが重要です。2026年10月25日時点では参加表明書の受付は終了し、参加資格確認後の提案段階へ進んでいます。この記事では、愛知県の10月1日修正版を含む最新公表資料をもとに整理します。

この記事で分かること

  • 元海翔高校・元尾西高校跡地の土地・建物の規模
  • 今回の公募が通常の「最高値入札」と異なる理由
  • 市街化調整区域で大規模開発を考える際のポイント
  • 既存校舎を残す・解体する場合の考え方
  • 弥富市と一宮市で公募条件にどのような違いがあるか
  • 周辺の地主・土地所有者がこのニュースをどう見ればよいか
  • 今後注目したい公募スケジュール

先に結論|「巨大な学校跡地=自由に再開発できる土地」ではない

今回の2物件で最も重要なのは、面積の大きさよりも土地利用条件です。

元海翔高校、元尾西高校はいずれも市街化調整区域にあり、愛知県の募集要項では、開発・建築に当たり原則として都市計画法第29条の開発許可、第43条の建築許可が必要とされています。

さらに、土地だけを取得することはできず、既存の校舎・体育館などを含めた一括取得が原則です。

取得後も、原則10年間は県が承認した利活用計画に基づく用途を継続し、所有権の第三者への移転や権利設定にも制限があります。

つまり、一般的な大規模更地のように、

「購入してから利用方法を考える」

というより、

「実現可能な利用計画を先に組み立て、その計画と価格の両方で審査を受ける土地」

と考えた方が実態に近いでしょう。

元海翔高校・元尾西高校跡地の概要

愛知県が公表した主な物件条件は次のとおりです。

項目元海翔高等学校元尾西高等学校
所在地弥富市六條町大崎22番地一宮市上祖父江字小稲葉18番地
土地実測面積40,822.68㎡53,571.68㎡
規模約4.08ha約5.36ha
登記地目学校用地学校用地
区域区分市街化調整区域市街化調整区域
建蔽率60%60%
容積率200%200%
建物32棟37棟
建物延べ面積12,011.28㎡12,180.02㎡
建物登記表題部未登記表題部未登記
最低売却価格非公表非公表

元海翔高校は、津島北高校との統合により2025年4月に津島北翔高校が開校したことに伴い、2025年3月末で校地・校舎の利用を終了しました。

元尾西高校は、稲沢高校・稲沢東高校・尾西高校の統合による稲沢緑風館高校の開校後、2025年3月末で閉校しています。

何ができる土地になる?現時点では用途は決まっていない

「跡地には何ができるのか」が最も気になるところですが、2026年10月25日時点でも、将来の具体的な施設や優先交渉権者は公表されていません。参加表明書の受付は10月15日に終了し、10月22日に参加資格確認結果が応募者へ通知されるスケジュールとなっています。

今回行われているのは、事業者から土地利用計画を募る公募型プロポーザルです。

したがって、住宅、大型店舗、物流施設など特定の用途になると現段階で断定することはできません。

特に両物件とも市街化調整区域です。

市街化調整区域は、市街化を抑制することを基本とする区域であり、土地を取得しただけで希望する用途の建物を自由に建築できるわけではありません。

元海翔高校では「地区計画」の策定を想定

元海翔高校について、愛知県の募集要項では、応募者に弥富市都市整備課などとの事前協議を求めています。

さらに、開発に当たって弥富市は地区計画の策定を想定していると明記されています。

弥富市の都市計画マスタープランも、都市計画に関する市の基本的な方針を定めるものです。

したがって元海翔高校については、事業者の計画だけでなく、市のまちづくり方針との整合や都市計画上の手続が大きなポイントになります。

元尾西高校は一宮市建築指導課などとの事前協議が必要

元尾西高校についても、市街化調整区域であるため原則として開発・建築許可が必要です。

募集要項では、一宮市建築指導課その他の関係部署との事前協議が求められています。

また、一宮市都市計画マスタープランや、これまで公共資産として利用されてきた経緯を踏まえ、周辺環境に配慮した土地利用計画とするよう求められています。

同じ「市街化調整区域の高校跡地」でも、行政との協議方法や都市計画上の実現手法まで同じとは限りません。

校舎は解体する?残して利用する?どちらも可能

今回の売却では、土地だけではなく既存建物もすべて買い受けることが条件です。

一方、既存校舎の再利用そのものは必須ではありません。

愛知県は、

  • 既存建物を利用する
  • 一部を解体する
  • 全部を解体する
  • 解体後に再建築する

といった選択を可能としています。

ただし、建物だけではありません。

門扉、フェンス、立木、残置物、地下埋設物なども原則として現状有姿で売却対象に含まれます。

「建物付き」は必ずしもプラスとは限らない

不動産実務では、大きな既存建物があるから土地の価値が高くなるとは限りません。

購入する事業者は、

  • 建物を新事業に転用できるか
  • 耐震性や設備更新をどう考えるか
  • 解体するといくら必要になるか
  • アスベスト等の確認が必要か
  • 地下埋設物などへの対応が必要か
  • 新築する場合の開発許可を取得できるか

などを含めて事業収支を考える必要があります。

愛知県も既存設計図書、検査済証等、越境物件、簡易地歴調査、アスベスト分析調査結果などの資料を応募事業者向けに用意しています。

一般の土地所有者にも同じことがいえます。

古い建物がある土地は「先に壊す」のではなく、建物を残した場合と解体した場合の買主・費用・土地利用を比較してから判断する方が選択肢を整理しやすくなります。

見落とせない「10年間」の制限

今回の公募には、一般の不動産売買ではあまり見ない条件があります。

対象地の引渡し翌日から10年間は、原則として、

  • 第三者への所有権移転
  • 対象地への権利設定

が制限されます。

やむを得ず行う場合には、あらかじめ県の書面による承諾が必要です。

さらに同じ10年間、県が承認した利活用計画に定めた指定用途として利用し続ける必要があります。

つまり、取得した事業者が数年後に、

「事業環境が変わったので別用途にしよう」

「土地をそのまま転売しよう」

と自由に変更できる案件ではありません。

大規模不動産では、取得価格だけでなく、長期間その事業を継続できる事業計画と資金計画が重要になります。

価格だけで優先交渉権者が決まるわけではない

今回の公募で特に注目したいのが審査方式です。

愛知県の評価基準は、合計200点。

大きく分けると、

評価項目配点
事業計画100点
価格100点
合計200点

となっています。

事業計画100点の中でも、土地利用・施設計画には50点が配分されています。

元海翔高校では、開発許可や地区計画を含めた土地利用計画、交通・動線、周辺環境への配慮などが審査対象です。

元尾西高校でも、土地利用計画、交通安全、騒音・振動などの周辺環境への配慮、地域貢献などが評価されます。

これは、不動産を「土地価格だけ」で判断してはいけないことがよく分かる事例です。

大規模な土地ほど、

何を建てられるか → 誰が利用するか → 道路や交通に対応できるか → 事業収支が成立するか → その結果として土地にいくら出せるか

という順番で検討されることがあります。

境界は確定済みだが、越境や継続使用する設備もある

今回の2物件は、隣接地との境界についてはすべて確定し、登記が完了しているとされています。

一方、個別条件まで見ると違いがあります。

元海翔高校

十四山土地改良区が管理する用水路の擁壁の一部が敷地内へ越境しており、売却後もその越境を継続することが条件です。

また、弥富市の同報無線設備や給水設備についても継続使用される予定です。

元尾西高校

一宮市が管理する用水路のフェンスの一部が越境しており、こちらも売却後の継続が条件です。

NTT西日本の電柱・支線や、一宮市の道路敷についても継続使用する条件が示されています。

これは一般の土地売買でも参考になります。

「境界が確定している」ことと、

「越境物や第三者設備が何もない」ことは同じではありません。

売却や購入前には、境界だけでなく、越境、電柱、配管、水路、通行・使用関係なども個別に確認する必要があります。

周辺住民への説明も事業化の重要な条件

大規模開発では、法令上建築できるかだけでなく、周辺地域との関係も重要です。

元海翔高校の優先交渉権者は、近隣住民や旧十四山村の自治会へ利活用内容を説明し、理解を得るよう努めたうえで、意見を踏まえた利活用計画を改めて策定することとされています。

元尾西高校についても、近隣住民と対象地が属する自治会への説明・理解形成が求められています。

そのため今後、事業者名だけを見るのではなく、

  • どのような用途を計画しているのか
  • 車両の出入りをどう考えるのか
  • 周辺道路へどの程度影響するのか
  • 騒音・振動への対策はどうなるのか
  • 地域へどのような機能を提供するのか

まで確認する必要があります。

周辺の地主・土地所有者は「土地価格が上がる」とすぐ判断しない

今回のような大規模跡地のニュースが出ると、

「周辺の土地も高くなるのでは」

「近くの自分の土地も事業用地になるのでは」

と考える方もいるでしょう。

しかし、現時点でそのように判断することはできません。

特に今回の物件は、

  • 県有地
  • 大規模な学校跡地
  • 市街化調整区域
  • 建物付き一括売却
  • 10年間の用途・権利制限
  • 公募型プロポーザル

という特殊な条件があります。

最低売却価格も非公表です。したがって、将来公表される売買価格があったとしても、それをそのまま周辺の一般宅地や農地の「坪単価」として利用することには注意が必要です。

自分の土地なら先に何を見るべきか

周辺に土地を所有している場合は、今回の跡地価格を予想するより、まず自分の土地について、

  1. 市街化区域か市街化調整区域か
  2. 現在の地目・利用状況は何か
  3. 前面道路と接道条件はどうか
  4. どのような用途なら許可の可能性があるか
  5. 農地の場合は農地法上の手続が必要か
  6. 境界・越境・水路などに問題がないか
  7. 住宅・事業用地など、どの買主を想定できるか

を確認する方が実務的です。

同じ市街化調整区域でも、土地ごとの位置、既存建物、過去の経緯、予定する用途などによって判断は変わります。

今後の公募スケジュール

愛知県の2026年10月1日修正版を含む最新スケジュールは次のとおりです。10月25日時点では参加表明書の受付と参加資格確認結果の通知まで進み、第2回質問受付期間に入っています。

時期予定
2026年9月24日~10月8日現地見学会
2026年10月1日第1回質問回答公表
2026年10月15日参加表明書受付締切(終了)
2026年10月22日参加資格確認結果の通知
2026年10月22日~11月12日第2回質問受付
2026年10月29日~11月12日第2回現地見学会
2026年11月26日第2回質問回答公表
2026年12月24日提案書類受付締切
2027年2月上旬プレゼンテーション
2027年2月下旬優先交渉権者選定
2027年3月基本協定締結
2027年4~6月現地確認・関係機関との協議
2027年7月県有財産売買仮契約等を予定

愛知県は、関係機関との協議などによってスケジュールが変更される場合があるとしています。

特に注目したいのは、2027年2月下旬の優先交渉権者選定です。

事業者だけでなく、どのような土地利用計画が評価されたのかが、その後の弥富市六條町、一宮市上祖父江周辺の土地利用を考えるうえで重要な情報になります。

大規模な市街化調整区域の土地は「価格より先に使い道」を確認する

元海翔高校・元尾西高校の公募から分かるのは、市街化調整区域の大規模土地では、面積や周辺価格だけで価値を判断できないということです。

一般の所有地でも、

「5,000㎡あるから事業用地になる」

「幹線道路に近いから店舗を建てられる」

「市街化調整区域でも既に建物があるから建て替えられる」

といった判断はできません。

まず行政上の土地利用条件を確認し、その土地で実現できる用途を整理したうえで、買主候補や価格を考える必要があります。

広い土地ほど、価格査定と土地利用調査を分けて考えることが大切です。

土地について相談する前に準備できる資料

自分の土地について売却・活用を検討する場合、次の資料があると条件を確認しやすくなります。

  • 固定資産税納税通知書・課税明細書
  • 登記事項証明書
  • 公図
  • 地積測量図・確定測量図
  • 境界確認書
  • 建築確認済証・検査済証
  • 過去の開発許可・建築許可関係資料
  • 賃貸借・使用貸借等の契約書
  • 農地の場合は農地関係資料
  • 土地・建物の写真

資料がすべてそろっていなくても、所在地から確認項目を整理することはできます。

特に市街化調整区域では、売却価格を考える前に「どのような土地なのか」を整理しておくことが重要です。

ヒロセット不動産への相談について

今回の元海翔高校・元尾西高校は特殊な大規模県有地ですが、一般の土地所有者にも共通する考え方があります。

土地は「広さ×坪単価」だけで判断するものではありません。

道路、接道、区域区分、既存建物、農地、境界、越境、想定する買主などによって、売却方法や活用方法は変わります。

ヒロセット不動産では、

「まだ売るとは決めていない」

「市街化調整区域なので何ができる土地か分からない」

「広い土地を相続したが使い道が決まっていない」

「売却と土地活用のどちらを検討すべきか整理したい」

という段階から、土地条件と選択肢を整理する相談ができます。

先に売却や建築を決めるのではなく、まず土地について確認すべきことを整理するところから始めるとよいでしょう。

まとめ|今後は「誰が買うか」より「どんな計画が選ばれるか」に注目

元海翔高校は約4.08ha、元尾西高校は約5.36haという大規模跡地です。

しかし、不動産として最も注目したいのは面積ではありません。

両方とも市街化調整区域であり、開発許可等、既存校舎の取扱い、10年間の用途制限、地域への影響、事業の実現可能性まで含めて土地利用計画が審査されます。

2027年2月下旬に予定される優先交渉権者の選定後は、事業者名だけでなく、どのような用途・交通計画・地域貢献策が提案されたのかを見ることが重要です。

また、周辺に土地を持っている方は、この売却価格を直接自分の土地に当てはめるのではなく、まず自分の土地の都市計画、道路、利用可能性、権利関係を確認してみてください。

土地の価値を考えるときは、「いくらか」より先に「何ができる土地なのか」を確認することが判断の出発点になります。

よくある質問

Q.元海翔高校の跡地には何ができる予定ですか?

2026年10月25日時点では決まっていません。参加表明書の受付は終了し、参加資格確認後の提案段階へ進んでいます。市街化調整区域のため、提案された事業についても開発・建築許可等の確認が必要です。

Q.元尾西高校跡地の売却価格はいくらですか?

最低売却価格は非公表です。応募者が価格を提案しますが、価格だけではなく土地利用・施設計画、交通、周辺環境、地域貢献なども含む総合評価で優先交渉権者が選定されます。

Q.既存の校舎は必ず利用しなければいけませんか?

必須ではありません。募集要項では、既存建物の一部または全部を解体して再建築することも可能とされています。ただし、土地・建物を一括取得し、解体や再整備に必要な費用は事業計画上考慮する必要があります。

Q.市街化調整区域でも大規模開発はできますか?

一律には判断できません。今回の2物件も原則として開発・建築許可が必要です。元海翔高校では弥富市による地区計画の策定が想定されています。具体的な用途の可否は関係行政機関との個別協議が必要です。

Q.跡地が開発されれば周辺の土地価格は上がりますか?

現時点では判断できません。選定される用途、交通への影響、周辺需要などがまだ確定していないためです。また今回の県有地は特殊な売却条件があるため、その取引価格を周辺一般土地の相場へそのまま当てはめることも適切ではありません。

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参考情報

本記事は2026年10月25日時点で確認できる愛知県の公表情報に基づいています。公募条件や日程は今後変更される可能性があるため、最新情報は愛知県の公表資料をご確認ください。

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愛知県|元海翔高等学校・元尾西高等学校跡地売却 公募型プロポーザル募集要項

弥富市|都市計画マスタープラン

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