不動産を売る前は、登記名義・住所・共有持分・抵当権・建物の記録を確認します。親名義や旧住所のままでも査定相談はできますが、買主への移転登記までに整える手続きと期間が変わります。この記事では、愛知県の土地・家を売る際の登記を、この順に整理します。

※本記事は2026年10月14日時点の法務省・法務局公表情報をもとに作成しています。個別の登記申請の可否や必要書類は、管轄法務局や司法書士・土地家屋調査士への確認が必要です。

この記事で分かること

  • 登記事項証明書の「表題部・甲区・乙区」の見方
  • 不動産売却前に確認したい主な登記
  • 相続登記と住所・氏名変更登記の義務化・期限
  • 抵当権が残っている場合の売却準備
  • 建物を解体したのに登記が残っている場合の対応
  • 司法書士と土地家屋調査士の役割の違い
  • 愛知県内でどの法務局が管轄になるかの考え方

先に結論|売却前は「価格」だけでなく「登記を移せる状態か」を確認する

不動産売却では、登記に問題があるからといって、査定や売却相談自体ができないとは限りません。

しかし、実際に買主へ引き渡す段階では、売主が正しい所有者として確認でき、必要な住所変更・相続登記・抵当権抹消などを行ったうえで、所有権移転登記へ進める状態にしておく必要があります。

売却を考え始めたら、最初に次の5点を確認すると整理しやすくなります。

  1. 登記名義人は誰か
  2. 登記上の住所・氏名は現在と一致しているか
  3. 相続が発生していないか
  4. 抵当権などの担保権が残っていないか
  5. 建物の現況と登記が一致しているか

登記が複雑な場合でも、売却を決める前から状況を整理できます。まず売却条件と登記上の課題を分けて考えることが重要です。

名古屋市・愛知県で売却前の状況を整理したい方はこちら

不動産登記とは?まず登記事項証明書の3つの欄を見る

不動産の登記記録は、土地1筆・建物1個ごとに作られ、主に「表題部」「権利部(甲区)」「権利部(乙区)」に分かれています。

区分主に記録される内容売主が確認するポイント
表題部土地の所在・地番・地目・地積、建物の種類・構造・床面積など現況と大きな相違がないか、解体済み建物が残っていないか
甲区所有権に関する事項誰の名義か、共有か、相続未登記ではないか、住所・氏名が現在と一致するか
乙区抵当権など所有権以外の権利住宅ローン等の抵当権、その他の担保権等が残っていないか

売主にとって重要なのは、「登記簿に何が書いてあるか」だけではありません。

現在の実態と登記が一致しているか、売買決済の日に買主へ所有権を移せるかまで確認する必要があります。

不動産売却前に確認したい6つの登記

1.所有者・共有名義の確認

最初に確認するのは、土地と建物の所有者です。

「自分の家だから自分名義」と思っていても、実際には夫婦共有、親子共有、兄弟姉妹の共有になっている場合があります。土地と建物で所有者が違うこともあります。

共有不動産全体を売却する場合は、共有者全員の意思確認が重要です。共有持分だけの売却とは買主層や条件も異なります。

共有名義については、共有名義の不動産は売却できる?兄弟の反対・持分売却の注意点で詳しく整理しています。

2.相続登記|相続した不動産の名義を整える

亡くなった親や祖父母の名義のままになっている不動産は、売却相談や価格査定を先に行うことはできます。

ただし、亡くなった登記名義人から買主へそのまま所有権を移すことはできません。誰が不動産を相続するのかを確定し、必要な相続登記を行ったうえで売却手続きを進めることになります。

相続登記は2024年4月1日から義務化されています。原則として、自己のために相続が始まったことと不動産の所有権を取得したことの両方を知った日から3年以内に申請が必要です。

2024年4月1日より前に相続が発生し、現在も相続登記がされていない不動産も対象です。経過措置では、原則として2027年3月31日までが一つの重要な期限になります。ただし、相続による取得を知った時期などで期限が異なる場合があるため個別確認が必要です。

遺産分割がまとまらず、期限内に通常の相続登記が難しい場合には「相続人申告登記」という制度もあります。ただし、相続人申告登記は所有権の取得を公示する相続登記とは異なります。売却や抵当権設定をする場合は、別途、相続登記の申請が必要です。遺産分割後の登記義務をこの申告で代替することもできません。

親名義の実家については、親名義の実家は売却できる?相続登記前の査定・費用と売却の流れも参考にしてください。

3.住所・氏名変更登記|2026年4月から義務化

不動産を購入した後に引っ越したり、結婚等で氏名が変わったりしても、登記簿上の住所・氏名が古いままのケースがあります。

2026年4月1日からは、不動産の所有者が住所・氏名・名称を変更した場合、原則として変更日から2年以内に変更登記をすることが義務となりました。正当な理由なく義務に違反した場合、5万円以下の過料の対象となる可能性があります。

2026年4月1日より前の住所・氏名変更で、現在も未登記のものも義務化の対象です。この場合は原則として2028年3月31日までの対応が必要です。

売却予定がある場合は、期限だけを見るのではなく、決済日に所有権移転登記ができるよう、登記上の住所と現在住所を早めに確認することが重要です。

詳しくは、2026年4月から住所変更登記が義務化|不動産を売る前に住所が違う場合どうする?で解説しています。

4.抵当権抹消登記|完済しても登記は自動では抹消されない

住宅ローンを完済していても、登記簿の乙区に抵当権が残っている場合があります。

ローン完済と抵当権抹消登記は別の手続です。登記が残っている場合は、完済後に金融機関から交付された書類などを使って抹消登記を申請します。

住宅ローンが残っている不動産を売却する場合は、一般的に売買代金等で借入金を返済し、抵当権抹消と買主への所有権移転を決済日に連動させます。

この調整には金融機関・司法書士・不動産会社が関係するため、「残債があるから売れない」と決めつけるのではなく、まず残高と売却見込み額を確認することが重要です。

5.建物滅失登記|解体したのに登記簿に建物が残っていないか

古家を解体した場合、現地に建物がなくても、登記簿上は建物が残っていることがあります。

建物が滅失したときは、表題部所有者または所有権の登記名義人は、原則として滅失の日から1か月以内に建物滅失登記を申請する必要があります。

「市役所へ解体を届けたから登記も消えている」とは限りません。売却前に土地と建物の登記事項証明書を確認し、現況と一致しているかを確認してください。

表示に関する登記の専門家は土地家屋調査士です。古家を解体して売るか、古家付きのまま売るか迷っている場合は、解体前に売却条件も比較した方がよいケースがあります。

名古屋市・愛知県の空き家・古家付き土地売却相談

6.所有権移転登記|買主への所有権移転を登記へ反映する

売買契約を結んだだけで、不動産登記簿の所有者が自動的に買主へ変わるわけではありません。

一般的な不動産売買では、決済日に残代金の支払い、登記関係書類の確認、抵当権抹消等と合わせて、売主から買主への所有権移転登記を進めます。

所有権が移る時期は売買契約の定めなどによります。所有権移転登記は、その権利変動を登記へ反映し、第三者に対して権利を主張するための手続きです。権利の移転時期と登記申請の時期を混同せず、契約・決済・申請をそろえて進めます。

売主側に相続未登記、住所相違、抵当権、本人確認資料の不足などがあると、決済直前に問題が判明することがあります。

そのため、売却活動を始める前か、遅くとも売買契約前までには登記状況を整理しておくことが重要です。

登記識別情報や権利証が見つからない場合でも、売却を諦める必要はない

「権利証がないから売れない」と思っている方もいますが、紛失しただけで直ちに売却不能になるわけではありません。

ただし、登記識別情報や従来の権利証がない場合は、所有権移転登記の際に追加の本人確認手続等が必要になることがあります。

対応方法は事案によって異なるため、売買契約後ではなく、売却相談の段階で司法書士へ確認できるよう準備しておく方が安全です。

司法書士と土地家屋調査士は何が違う?

登記といっても、専門家の役割は同じではありません。

専門家主に扱う登記売却前に関係しやすい場面
司法書士所有権移転、相続、住所・氏名変更、抵当権抹消など権利に関する登記相続名義の整理、売買決済、ローン完済、住所変更
土地家屋調査士建物表題・滅失、土地分筆など表示に関する登記解体済み建物、未登記建物、分筆、現況と登記の不一致

売却では、不動産会社だけで全ての登記手続きを判断・代理するわけではありません。

不動産会社は売却条件や買主との取引を整理し、権利登記は司法書士、表示登記は土地家屋調査士へ必要に応じて確認する、という役割分担になります。

愛知県で売却する場合|不動産の所在地によって管轄法務局が違う

不動産登記の管轄は、所有者の住所ではなく、原則として不動産の所在地によって決まります。

名古屋法務局の2026年7月18日更新情報では、愛知県内の主な地域の不動産登記管轄は次のように分かれています。

不動産所在地主な管轄
西尾市名古屋法務局 西尾支局
安城市・刈谷市・碧南市・高浜市・知立市名古屋法務局 刈谷支局
岡崎市・幸田町名古屋法務局 岡崎支局
豊田市・みよし市名古屋法務局 豊田支局
名古屋市中区・東区・北区・中村区・西区・千種区・昭和区名古屋法務局 本局
名古屋市熱田区・南区・中川区・港区・瑞穂区・緑区名古屋法務局 熱田出張所
名古屋市名東区・守山区・天白区名古屋法務局 名東出張所

管轄や取扱事務は変更される可能性があります。実際の申請前には名古屋法務局の最新案内を確認してください。

売主が見落としやすい登記のポイント

固定資産税の納税通知書だけでは登記名義を確認できない

固定資産税関係の資料は売却準備に役立ちますが、登記名義や抵当権等を確認するには登記事項証明書等を見る必要があります。

住宅ローン完済=抵当権抹消済み、ではない

金融機関への返済が終わっていても、抵当権抹消登記が終わっているかは別に確認してください。

解体工事と建物滅失登記は別の手続き

古家を取り壊した後は、土地だけでなく建物の登記が残っていないかを確認してください。

登記面積と実際に使える土地の判断は別問題

土地の地積が登記されていても、境界標の位置、越境、道路、接道、現況測量などは別途確認が必要です。

査定額だけではなく、買主が安心して取得・建築・利用できる状態かまで確認することが、売却条件の整理につながります。

境界が分からない土地でも売却できる?測量・境界確定が必要になるケース

不動産会社へ相談する前に準備できる資料

次の資料があると、登記と売却条件を整理しやすくなります。

  • 固定資産税納税通知書・課税明細書
  • 登記事項証明書
  • 登記識別情報通知または従来の権利証
  • 購入時の売買契約書
  • 住宅ローン残高が分かる資料
  • 相続関係の戸籍・遺産分割協議書等(該当する場合)
  • 住所変更の履歴が分かる資料(必要な場合)
  • 測量図・境界確認書
  • 建築確認関係資料、解体関係資料

すべてそろっていなくてもご相談いただけます。まず現在分かっている資料で状況を整理し、不足資料や専門家への確認が必要な点を洗い出す方法もあります。

不動産会社へ確認したいこと

登記に不安がある物件を売却するときは、査定額だけではなく次の点を確認してください。

  • 現在の登記名義は誰か
  • 相続・住所変更・抵当権抹消など、売却前に必要な登記はあるか
  • どの段階で司法書士・土地家屋調査士へ確認するか
  • 決済日までに登記手続きを完了できる見込みか
  • 住宅ローン残債がある場合、返済と抵当権抹消をどう進めるか
  • 建物を残すか解体するかで登記や売却条件がどう変わるか
  • 境界・道路・未登記建物など、登記以外の問題もないか

不動産売却は「登記を直してから不動産会社へ行く」のではなく、売却条件と登記手続きを並行して整理した方がよい場合があります。

売却前に名義や登記を整理したいとき

名古屋市を含む愛知県の土地、戸建、空き家、相続不動産などについて、売却するか決める前の段階から整理できます。

たとえば、

  • 親名義のままで何から始めればよいか分からない
  • 登記簿の住所が昔のまま
  • 抵当権が残っているか確認したい
  • 相続登記前に売却価格や進め方だけ知りたい
  • 古家を解体してから売るべきか迷っている
  • 共有名義で家族の意向がまとまっていない

といった状態でも、まず「売却する場合に何を確認する必要があるか」を整理することができます。

登記申請そのものに関する専門的な判断・代理は司法書士や土地家屋調査士の業務になりますが、不動産売却のスケジュール、査定、買主条件、必要な専門家への確認事項を一緒に整理しておくと、後から手続きが止まるリスクを減らしやすくなります。

名古屋市・愛知県の不動産査定・売却相談

まとめ|売却前の登記確認は「名義・住所・担保・建物」の4方向から

不動産売却前に登記を確認するときは、まず次の4方向から見ると整理しやすくなります。

  • 名義:本人名義か、相続未登記や共有ではないか
  • 住所・氏名:現在の情報と登記が一致しているか
  • 担保:抵当権等が残っていないか
  • 建物:現況と表題部が一致しているか、解体済み建物が残っていないか

登記の問題は、物件価格そのものを決める話とは別ですが、売買を最後まで完了させるために重要です。

売却を決める前でも、登記事項証明書を確認し、「自分の不動産では何が必要か」を把握しておけば、売る・残す・貸すといった選択肢を比較しやすくなります。

愛知県の不動産売却・査定相談の総合案内

よくある質問

Q.相続登記が終わっていなくても不動産会社へ相談できますか?

はい。売却価格の目安や売却方法、今後必要になる手続きについては先にご相談いただけます。ただし、実際に買主へ所有権を移す前には相続関係を整理し、必要な相続登記を行う必要があります。相続人や遺産分割の状況によって手続きが異なるため、早めに確認してください。

Q.登記簿の住所が昔のままでも売却できますか?

査定や売却についてご相談いただけます。ただし、買主への所有権移転登記を行う段階では、登記上の住所と現在住所のつながりを確認し、必要な住所変更登記を行うのが基本です。2026年4月1日から住所・氏名変更登記自体も義務化されています。

Q.住宅ローンが残っていても売却できますか?

売却できる可能性はあります。一般的には売却代金等でローンを完済し、抵当権抹消と所有権移転を連動させます。ただし、売却見込み額より残債が多い場合は追加資金等の検討が必要になるため、残高と査定額を早めに確認してください。

Q.権利証や登記識別情報を紛失したら売れませんか?

紛失しただけで直ちに売却できなくなるわけではありません。ただし、所有権移転登記の際に追加の本人確認手続等が必要になる場合があります。売買契約後に慌てないため、売却検討の段階で司法書士へ確認しておくと安全です。

Q.古家を解体したら登記手続きは必要ですか?

登記されている建物を取り壊した場合は、原則として滅失の日から1か月以内に建物滅失登記を申請する必要があります。表示に関する登記は土地家屋調査士の専門分野です。解体前なら、古家付きで売る方法と更地にする方法も比較してから判断してください。

Q.司法書士と土地家屋調査士のどちらへ相談すればよいですか?

所有権移転、相続、住所変更、抵当権抹消など権利に関する登記は司法書士、建物表題・滅失、土地分筆など表示に関する登記は土地家屋調査士が主な専門家です。売却全体の進め方は不動産会社と整理し、必要な専門家へつなぐ形が分かりやすいでしょう。

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参考情報

補足した制度説明の出典:法務省「相続人申告登記について」、民法176条・177条。登記の種類によって役割が異なるため、売買契約の条件と登記記録を照合します。