愛三工業の安城工場について、2026年3月期の有価証券報告書に「安城工場拡張用土地購入」という項目が記載されています。

投資予定額は659百万円、つまり6億5,900万円。着手年月は2026年5月、完了予定は2027年2月です。ここで注意したいのは、6億5,900万円は有価証券報告書上の「投資予定額」であり、確定した土地売買代金として公表されているわけではないことです。

一方、2026年9月16日時点で確認できる公式資料では、今回購入する土地の具体的な地番・面積・売主、新工場を建設するのかどうかまでは公表されていません。

安城市東端町周辺で土地を所有している方にとって気になる動きですが、「愛三工業が土地を買う=近隣の土地価格が上がる」「周辺の土地も工場用地として使える」と判断することはできません。

今回は、分かっている事実とまだ分からないことを切り分けたうえで、東端町周辺の土地所有者が確認しておきたいポイントを整理します。

※本記事は2026年9月16日時点で確認できる公開情報をもとに作成しています。

この記事で分かること

  • 愛三工業が公表している安城工場の拡張用土地購入計画
  • 6億5,900万円という金額の正確な意味
  • Aisanみらい工場と今回の土地購入計画の違い
  • 東端町周辺の土地を工場・事業用地として考えるときの確認事項
  • 周辺で土地を所有している人が今すぐ確認できること

先に結論|「土地購入計画」は確認できるが、取得場所や新工場計画までは分からない

愛三工業株式会社が2026年6月11日に提出した2026年3月期有価証券報告書には、安城工場の重要な設備計画として次の内容が掲載されています。

項目有価証券報告書の記載
事業所安城工場(愛知県安城市)
設備の内容安城工場拡張用土地購入
投資予定額659百万円(6億5,900万円)
着手年月2026年5月
完了予定年月2027年2月

同じ表には、安城工場で「エンジンバルブ」に793百万円の投資計画も記載されており、着手は2024年10月、完了予定は2026年9月となっています。

したがって、愛三工業が安城拠点への投資を続けていることは確認できます。

ただし、今回の659百万円の土地購入について、公開資料から確認できるのは「安城工場拡張用土地購入」というところまでです。

取得予定地を推測して土地売買や価格判断をするのは避けた方がよいでしょう。

6億5,900万円は「土地の確定購入価格」とは限らない

今回、特に区別しておきたいのが金額の意味です。

有価証券報告書に掲載されている659百万円は、「投資予定額」です。

したがって、

「愛三工業が6億5,900万円で特定の土地を買った」

とまでは確認できません。

土地の面積も公表されていないため、

「6億5,900万円÷面積」

から周辺の坪単価や土地価格を推測することもできません。

事業用不動産では、土地そのものの条件だけでなく、隣接地との一体利用、道路、造成、インフラ、事業上の必要性などによって企業側の評価が変わります。

住宅地の相場と企業が取得する工場用地の金額を、そのまま比較することも適切ではありません。

現在の愛三工業・安城工場は安城市東端町北山100番

愛三工業の公式拠点情報では、現在の安城工場所在地は「愛知県安城市東端町北山100番」です。

また、同じ東端町には「Aisanみらい工場」があり、所在地は「安城市東端町明祥北20番1」とされています。

Aisanみらい工場は2025年5月29日に竣工しました。

愛三工業の公表資料によると、敷地面積は約33,000㎡、延床面積24,815㎡で、総工事費は約85億円。ただし、この85億円には土地代と生産設備投資は含まれていません。

さらに、2023年の愛三工業の発表では、この工場について「安城工場隣接地に新工場を建設」と説明されていました。

今回の土地購入とAisanみらい工場は分けて考える必要がある

ここで混同しないようにしたいのが、2025年に完成したAisanみらい工場と、2026年3月期有価証券報告書に掲載された「安城工場拡張用土地購入」です。

今回確認した有価証券報告書には、659百万円の土地購入がAisanみらい工場の追加用地なのか、既存安城工場の別方向への拡張なのか、別の用途なのかは記載されていません。

新しい工場棟を建てるという記載も確認できません。

そのため現時点では、

「東端町のこの土地を買うらしい」

「次の新工場がここにできるらしい」

といった推測と、公表された事実を分けて見る必要があります。

東端町は「工場がある地域=どこでも工場用地」ではない

東端町周辺では工場や農地、既存集落などが近接しています。

安城市が公表する「安城明祥地区工業団地地区計画」では、東端町西山・東山・青ノ山・新長田・宮裏の各一部が東端地区として位置付けられています。

東端地区の面積は約4.7haで、資料では「工業専用地域に隣接し、周囲は農地や集落が形成されている地区」と説明されています。

つまり、同じ東端町でも土地利用条件は一様ではありません。

今回愛三工業が購入する予定の土地が、この地区計画区域に含まれているのかについても、公表情報からは確認できません。

自分の土地が事業用地として使えるかは何で決まる?

企業の土地購入ニュースを見ると、

「近くに土地を持っているので、工場用地として売れるのではないか」

と考える方もいるでしょう。

実際には、少なくとも次のような条件を一つずつ確認する必要があります。

確認項目なぜ確認するのか
市街化区域・市街化調整区域開発や建築の可否・手続きが変わるため
用途地域・地区計画建てられる建物や利用方法が異なるため
農地・農用地区域等農地転用など別の手続きが関係する場合があるため
面積・間口・土地形状工場や物流施設の配置計画に影響するため
前面道路大型車両の出入りや建築計画に影響するため
隣接地との関係まとまった事業用地として利用できるかが変わるため
上下水道・電力等事業内容によって必要なインフラが異なるため
境界・越境取得後の利用や売買条件に影響するため

特に事業用地では「坪単価がいくらか」だけでは判断できません。

企業側から見れば、必要な面積を確保できることや、建物・駐車場・構内道路を配置できることの方が重要になる場合があります。

市街化調整区域でも工場が建つケースはあるが、条件確認が必要

安城市には、都市計画法第34条第12号に基づき、市街化調整区域内でも一定の条件を満たす工場・研究所について開発許可の対象とする制度があります。

ただし、対象となる業種や区域などの要件があります。

「近くに工場があるから、自分の土地でも工場が建つ」

という制度ではありません。

安城市では「あんじょうマップ」で都市計画情報を確認できるようになっています。最初に所在地を特定し、市街化区域・市街化調整区域、用途地域、地区計画などを確認することが基本です。

農地の場合には、さらに農地法や農業振興地域などの確認が必要になる場合があります。

土地所有者が今回のニュースを見てやらない方がよいこと

1.周辺土地も値上がりすると決めつける

企業による土地取得は地域を見るうえで一つの材料ですが、それだけで周辺地価の上昇を判断することはできません。

取得する土地の場所・面積も現時点では分かっていません。

2.6億5,900万円から周辺の坪単価を逆算する

土地面積が公表されていないため計算できません。

また、659百万円は有価証券報告書上の投資予定額です。

3.「愛三工業が近い」という理由だけで事業用地として査定する

事業用地では、道路、都市計画、土地形状、インフラ、周辺環境などを確認する必要があります。

一般住宅用地とは買主も評価基準も異なります。

4.売却を決める前に高額な造成や測量を進める

測量や境界確認が必要になる土地はありますが、何をどこまで行うべきかは売却方法や想定買主によって変わります。

先に土地条件と需要を整理してから判断した方がよいケースもあります。

東端町周辺で土地を所有している人が最初に確認したいこと

愛三工業の土地購入計画をきっかけに自分の土地について考えるのであれば、いきなり「売るかどうか」を決める必要はありません。

まず確認したいのは次の順番です。

  1. 所有している土地の正確な地番と面積
  2. 市街化区域・市街化調整区域などの都市計画
  3. 用途地域・地区計画
  4. 農地の場合は農地関係の指定
  5. 前面道路と接道状況
  6. 土地の間口・形状・高低差
  7. 境界や越境の状況
  8. 周囲が現在どのように利用されているか
  9. 住宅用・事業用・農地など、どの買主が想定できるか

ここまで整理すると、

「住宅用地として考える土地なのか」

「事業用地として検討できる可能性があるのか」

「現状では保有を続ける方がよいのか」

を比較しやすくなります。

今後どの情報を確認すればよい?

今回の土地購入計画については、今後さらに具体的な情報が公表される可能性があります。

特に確認したいのは、

  • 愛三工業のIR資料や有価証券報告書
  • 愛三工業の公式ニュース
  • 建物を新設する場合の建築・環境関係の公表資料
  • 安城市の都市計画や開発関係資料

です。

現時点では「土地購入」という情報から先を推測せず、新しい一次情報が出た時点で更新していくのが適切です。

土地について相談する前に準備できる資料

東端町やその周辺の土地について確認したい場合、次のような資料があると整理しやすくなります。

  • 固定資産税納税通知書・課税明細書
  • 登記事項証明書
  • 公図
  • 地積測量図・確定測量図
  • 境界確認書
  • 古い売買契約書
  • 農地関係の資料
  • 道路や上下水道について分かる資料

すべて揃っていなくても相談は可能です。

特に古くから所有している土地や相続した土地では、最初から資料が揃っているケースばかりではありません。

ヒロセット不動産への相談について

愛三工業の土地購入計画があるからといって、周辺土地をすぐ売却する必要はありません。

一方で、

「自分の土地は工場用地として使えるのか」

「住宅地として考える土地なのか」

「市街化調整区域や農地なので何ができるか分からない」

「売るつもりはないが、土地の条件だけ整理しておきたい」

という場合には、早めに現状を確認しておく意味があります。

ヒロセット不動産では、売却すると決める前の段階から、土地の都市計画、道路、形状、利用状況などを確認し、売却・保有・活用の選択肢を整理することができます。

企業の土地取得情報だけで結論を出すのではなく、自分の土地の条件を確認したうえで判断することが大切です。

まとめ|愛三工業の拡張計画と自分の土地の価値は分けて考える

愛三工業の2026年3月期有価証券報告書では、安城工場について659百万円の「拡張用土地購入」が計画され、2027年2月の完了予定とされています。

一方で、取得する具体的な土地、面積、新工場建設の有無については、今回確認した公開資料では分かりません。

東端町周辺には工業利用されている土地がある一方、農地や集落もあり、同じ町内でも土地の条件は異なります。

土地を所有している方は、企業のニュースだけで価格を判断せず、まず都市計画、道路、農地、土地形状、境界など「自分の土地そのものの条件」を確認することから始めるとよいでしょう。

よくある質問

Q.愛三工業が購入する土地の場所はどこですか?

2026年9月16日時点で今回確認した有価証券報告書では、具体的な地番や面積は公表されていません。「安城工場拡張用土地購入」と記載されているだけなので、周辺の特定の土地を取得予定地と断定することはできません。

Q.6億5,900万円が土地の売買価格ですか?

有価証券報告書では659百万円は「投資予定額」として記載されています。確定した土地売買価格として公表された金額とは限らないため、周辺土地の坪単価算定には使えません。

Q.新しい工場が建設されるのでしょうか?

現時点では確認できません。今回の開示内容は「安城工場拡張用土地購入」であり、その土地に新工場を建設するという内容までは記載されていません。追加の公式発表を確認する必要があります。

Q.愛三工業の近くの土地なら工場用地として売れますか?

場所だけでは判断できません。都市計画、道路、土地面積・形状、農地指定、インフラなどによって利用可能性は変わります。まず土地ごとの条件確認が必要です。

Q.市街化調整区域の土地でも工場用地になる可能性はありますか?

一定の許可制度に該当するケースはありますが、自由に工場を建設できるわけではありません。安城市の制度では区域や業種など複数の要件があるため、所在地を特定したうえで行政への確認が必要です。

関連記事

安城市の不動産売却相談|土地・戸建・空き家・相続不動産の整理窓口

安城市和泉町・根崎町・東端町を走って分かる地域差|国道23号周辺の土地利用を解説

国道23号名豊道路・榎前~西尾東IC周辺で工場・物流施設の建設が進む|2026~2027年の動向まとめ

土地活用・駐車場・遊休地の相談

愛知県の不動産売却相談|市町村別の相談窓口

参考情報

愛三工業株式会社 2026年3月期 有価証券報告書

愛三工業株式会社 国内拠点

愛三工業「Aisanみらい工場」竣工式を実施

安城市 安城明祥地区工業団地地区計画

安城市 都市計画法第34条第12号に基づく開発許可制度

安城市 都市計画情報の閲覧・あんじょうマップ